中国のシュラフメーカー「AEGISMAX」の「MINI」


Aegismaxと言う名のシュラフメーカーをはじめて知ったのは、二ヶ月に一回発刊されるトレラン専門誌の「Run+Trail」のVol26号(下の写真の号)だった。小特集で中国のアウトドアのメーカーズフェアの紹介がされている中で、記者に高評価をされていたシュラフメーカーがAegismaxだった。その時は「へえ」くらいにしか思っていなかった。


私がAegismaxの寝袋を試しに購入する前によく使っていた寝袋は、家のすぐ近所に住んでいるサバイバル登山で有名な服部文祥さんから譲り受けたHaglofsの年代物のシュラフだ。(一部の人にはめっちゃ自慢できるシュラフかもしれない……笑)

年季が入っているが物自体は素晴らしく良い。
なにせ、ロゴがまだチロリアンハット時代のものである。激レアのビンテージといっても過言ではないかもしれない。文祥さん曰く、このシュラフはカナディアンロッキーのスキー旅で使ったものらしい。たしかに、使うとあったかい。古いがものの作りが良いと長持ちする査証だろう。ただ、少しかさばり、重い。OMMなどで使ったシュラフもこのシュラフだが、もう少しコンパクトで軽いシュラフを探していた。

元々は、ISUKAのエア280か、SEA TO SUMMITのスパークⅡあたりを購入することを考えていた。しかし、購入の二の足を踏ませたのはやはり価格である。シュラフは高いのだ。比較的手頃と言えるエア280ですら価格は30000円弱、スパークに至っては約5万円……。貧乏な山ギア好きが、おいそれと購入できる価格ではない。

そこで目についたのはAegismaxMINIというシュラフだった。
なんとAmazonで買おうとすると、価格はMサイズで8700円!!比較的安いエアの何と1/4程度という衝撃的な価格である。正直言って安すぎて怪しい……メーカー公表スペックでは、800fpのグースダウン230gで、総重量は400g程度、使用下限温度+6度だという。………こんなカタログ値だけなら超ハイスペックシュラフが10000円以下なんて、正直信じられない。しかし、不安に思って色々と調べると、海外のレビューでは軒並み高評価。ランプラストレイルでも紹介されていたし、日本に散見されるレビューも高評価が多い。これは騙されたと思って買うしかないか………と、早速Amazonで購入を決めた。

で、1日後。さすがAmazon。あっという間に届いた。



物を取り出してみる。日本のレビューでもちらほらと見かけた匂いに関しては自分にとっては特に気になる点はなかった。若干、独特な新品のダウン製品らしい匂いはするが、使っていくうちにどっか消えた。個体差はあるようだが。

サイズはMを頼んだが、問題はなかった。なお私の身長は178cmだ。キルト型との記載があるが、頭は簡易的ながらも覆えるような作りになっていて、コードを引っ張れば調整することができた。中の空間は若干狭く、足を曲げ伸ばしをしたりするとつっかかる感じがある。その分体に密着している感じは強い。そこの窮屈さも取れるところをどう評価するかだろう。

500mlのペットと大きさを比較してみると、コンプレッションをサックで効かせればだいぶ小さくなる。サックはもともと付属しており、長期保管のためのメッシュサックも付属しているには気配りがある。重さも実測で500弱と期待値以上。

広げてみて、ダウンのロフトの戻りを見てみると、コンプレッションしてすぐはヘニョヘニョで嵩がなく心配になるが、すぐにロフトは回復。しっかりとしたシュラフっぽい様相を呈してきたではないか。

縫い目からめっちゃ羽毛抜ける、みたいなトラブルも現状発生しておらず、使用に問題はない。これはなかなか作りも悪くなさそうだ。あとはフィールドで使って見るだけ!!ということで、フィールドで身をもってテストをしてきたので、以下では使用した事例について紹介をしたい。

9月始まりの八ヶ岳南麓 1000m付近
使用環境・気温15度くらい
・テント泊
・シュラフカバー不使用
・スリーピングマット:OMM DUOマット
・ウエア:上フリース1枚、下パンツ

オリエンティアにはおなじみ八ヶ岳レジャーセンターでテン泊した際にテスト。まだまだ夏の気候の中テストを実施した、いわばゆるキャン△だった。この時はそんなに冷え込まないだろうとタカをくくって、寝るときの格好も防寒を全く意識していない薄手のフリースとtrimtexのトレーナーパンツだけという舐めた格好だった。しかし、シュラフに入って寝た結果、これでも「暑い」という感想しかなかった。暑くて、下半身だけをシュラフに入れて寝る体勢になってしまった。その日の気温は15度くらいだったので、おそらく10度くらいが体をシュラフに入れた時に快適に寝れる温度かもしれない。盛夏の夏山縦走に使用するための軽量性と保温性は十分にあると感じた。

これが8700……モンベルのシュラフが価格競争で大敗している……

10月中旬の茅野での野宿
 使用環境・気温5度くらい、風強め
・野宿(シェルター類不使用)
・シュラフカバー使用
・スリーピングマット:OMM DUOマット
・ウエア:上フリース2枚、下タイツ+パンツ

では、もう少し気温が低い時ならばどうだろうか、ということで試してみた。試してみたのは、茅野の某公園。テント等は張らず、雨を凌げる場所でゴロ寝した。朝の気温は7時の時点で茅野駅近くの温度計で8度。おそらく夜中は5-7度くらいだったのだろう。

結論から申し上げると、「寒い………」そして「風が冷たい………

前者の問題は寝袋の保温力に起因するというより、敷いていたマットの問題だったと推察する。OMMDUOマットは、ペラペラで、体に敷くと足は全てマットの外に出てしまう。そうすると地面のコンクリの冷たさが直にシュラフに伝わってしまい、非常に足元が冷えた。寝袋の性能的にはギリギリ限界下限(メーカー公表)で、確かにまあ保温性に問題はない。だが、5度前後の気温の中で快眠するにはシュラフだけじゃなくてマットを考える必要がありそうだ。多分、サーマレストとかのクローズドセルなら足元の冷たさは感じなかっただろう。

後者の風が冷たいという問題。これはシェルターがあって風除けがあれば考慮する必要のない問題ではある。シュラフカバーで覆っておけばそこの保温性は風が当たっても保たれるが、シュラフカバーがないとしんどい。風が直にシュラフに当たると一気に熱が持ってかれてしまう。シュラフカバーを使用しないでこの時期にMINIで野宿することは厳しいだろう。普通に寒い。テントを張らないで野宿や、タープのみでの泊まりをするなら、頭もすっぽりと覆えるタイプのシュラフを購入するべきだと思った。快眠できなくても良いならばMINIでも問題はないだろうが。結局、この野宿では寒くて、浅い眠りと起床を繰り返す形で3時間しか寝ることができなかった。原因はシュラフの性能以外に起因することが大半であったので、悔しい……快眠のためにはシュラフ以外のギアも吟味しないといけないようだ。インフレータブルタイプで激安高性能な中華スリーピングマットを発掘したい所存である。発掘した際にはまた報告をしたい。

10月中頃八ヶ岳本沢温泉でテン泊
使用環境・気温氷点下2度くらい(多分) 外に出していたペットボトルの水が凍った
・テン泊
・シュラフカバー使用
・スリーピングマット: JRgear Zeon + OMM DUOマット
・ウエア: フリース一枚+ダウンジャケット+ウインドシェル 下タイツ+パンツ+ダウンパンツ

 さて、テストした環境下で最も気温が低かったのは10月中旬に八ヶ岳の本沢温泉でテント泊を使用した時である。この時は朝、外に出していた水が半分凍っているくらいには冷え込んでいた。朝登った硫黄岳は真っ白になっていた。

これまでよりも寝袋以外の防寒着を使っていたり、エアマットをスリーピングマットに使用しているなど、寝袋以外での装備が充実している中での睡眠となった。割と着用しているものや使用しているギアはOMM的であったし、そして氷点下という外の環境はOMMJAPANに近いかもしれないと、その時は思っていた。OMMでこのギアは使えるのかというテストになったと思う。

さて結果だが、上下ダウンを着込んで防寒しているため、体の中心部には寒さを感じなかった。シュラフ以外の部分でブーストをすれば、MINIでも氷点下の環境に十分対応ができそうだった。ただ、象足を持っていっておらず、ウールのソックス一枚だった足の指先が非常に冷えた。シュラフ1枚だけの防寒性だと、やはり外が氷点下の環境だと寒さを感じてしまった。

それでも、吹きっさらしの中、茅野で野宿した時よりもしっかりと寝ることはできて、計7時間くらいは浅いながらも睡眠をとることができた。MINI程度の保温力でもその他で補強すれば十分カバーできる。スリーシーズン中なら使うことができそうだということがわかった。少なくとも私なら、OMM程度の環境なら軽さを重視してMINIを使うかな。

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テント泊で快眠するには、シュラフだけではなくてマットだったり、着込むものだったりが重要であると改めて感じたAegismaxMINIだった。ぜひ、マットも中国でもなんでもいいから安くて高性能なものを発掘したい!情報があったら教えてください!そのうちテントとかインナーとかもそういう方向に向かってしまいそうだ笑。

人によって寒さの感じ方は異なるので、これがあれば秋山とかOMM大丈夫!と言える訳ではないことは承知していただきたい。あくまでも、どのくらいの保温力が必要かは、人によって変わってくるので、経験から適正なシュラフを選択していただきたい。

AegismaxではMINI以外にもシュラフのレパートリーがある。マミー型のシュラフも存在している。そして価格はめちゃくちゃ安い。シュラフという道具は非常に高価で、テン泊をしたいという人にとっての1つハードルとなっている側面があるように思う。そんな時、とにかく安くてそれなりの性能を持ったシュラフが欲しい!ということならば、Aegismaxのシュラフは強い味方になるかもしれない。これからも注目をしていかなければいけないメーカーであることは間違いがない。

中国半端ないって! それが感想である。そのうち日本市場を圧倒的価格力で席巻するかもしれない。中国のギアメーカーにもアンテナを張りたいところだ。

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雪が積もり始め、もう高い山へ気軽にトレランシューズでいける時期は終わりを告げてしまったようだ。これからは標高が低めの山でのトレランや、オリエンテーリングで地道に体力をつけていく時期にしたい。少なくとも開催が近づいてきたITJを完走できる体にせねば……
でも、もう少し紅葉は見頃だ。秋真っ盛り。


おしまい。

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