オリエンテーリング大会のあたらしい実況者、出てこいや!!
はじめに
Arigayです、こんにちは。裏アドベントカレンダーを見る方は相当のオリエンテーリング好きだろうということで、今回この記事を書くことにしました。ここのところ、私は有難いことにたくさんの大会でお声がけをいただき、主に大会の演出面にかかわってきました。その中でも特に、多くの大会で会場や配信での実況担当として大会に携わってきました。主な実況したイベントの実績は以下の通りです。
・全日本選手権(ミドル・ロング):2020年~(今年で5年目)
・クラブカップリレー:2020年~(今年で5年目)
・インカレ;ロング2022
上記以外でも直近の大体の大きな国内大会のイベント運営には1度以上は携わることができました。本当にありがたい経験を毎年させてもらっています。その経験を今日は、少しでも読んでくれた方や、実況とか演出をやるぜという方に還元できればな、と思っています。
大体いつも怪しい恰好して実況してます(写真右) |
これまで携わった大会演出の思い出
大学時代は競技一筋で大会運営を自分がするなんてありえねえぜ!と思っていました。大学大会の運営もやる気ゼロでした。そんな自分が今では毎年のように全日本の運営をしているので、人生何が起こるのかわかりません。
ターニングポイントになったのは、間違いなく2019年に山梨県で開催されたアジアジュニアユース選手権の運営に駆り出されたことです。最近オリエンテーリングを始めた方はご存じないかなと思いますが、かなり大規模な国際大会で、当時の若手のオリエンティア中心に、山梨の北杜市が舞台でしたので、私が所属しているトータスのメンバーも多く運営に携わった大会でした。大会では、私は体力があること、ランカメができることから、広報・演出パートに配属されました。これがすべての始まりでした。
AsJYOC2019 豪華運営メンバーによる一大プロジェクトでした。 |
ランカメ中の自分とシンガポールのWillardたち。彼らには東南アジアに行くと会えます。 |
この時の演出パートのチーフはトータスのK柴さんという鬼…もといエースでした。このK柴さんは一度、全日本のような大会で運営をされたことがある方はご存じと思いますが、最近の全日本の演出の方向性に大きく携わっていたり、最近のブラッシュアップされた全日本の空気感を作るのに多大な貢献をされた方なんですが、それだけあって非常に鬼です。要求が高いのですが、本人もものすごく手を動かしますので、それを見るとみんな仕事をやらないといけないという雰囲気を作れるリーダーです。K柴さんの運営を何回も経験した後に、ちょうどシンエヴァンゲリオンの映画公開に合わせた庵野監督の制作ドキュメンタリーがNHKで放送されたのですが、放送された庵野監督の働き方はK柴さんの働き方と瓜二つでした。
特に記憶に残っているのは、毎日競技が終わった後に翌日の開場で配布するための新聞紙(リンク先はミドルの記事)を作成するのですが、これを毎日、ほぼ徹夜で作成するという無茶をしたことです。あまりの過酷さにみんな悲鳴を上げていました。どれくらい過酷かというとレッドブルを飲みまくって、限界を迎えたK柴さんがプリンターに突っ伏し、そのK柴さんの顔に延々と印刷物が吐き出されても起きないというくらい、限界運営でした。(同時並行で、こちらも近年の運営で大活躍していたK川監督作品の映像も毎日公開されていて、そちらも毎日極限まで頑張っていました)
連日の徹夜運営でぶっ倒れたK柴さん(写真中央) |
今でも努力の成果はHPやYOUTUBEで見れますので、最近始めた方でしらないな~という方は我々の徹夜で作り上げた努力の結晶をご覧ください。きっと、来年の設楽で行われるアジアジュニアユース選手権も同じくらい輝く部隊がつくられると思いますが、その裏には運営者の死にもの狂いの努力があるんだぜということを忘れないでほしいです。
そんなクソ……素晴らしい運営をすると、自然にみんなが仲良くなるものです。仕事とかはやはりそういうものだと思います。このアジアジュニアユース運営を機にK柴さん、K川監督、K原巨匠あたりは国内の主要な大会の演出にかかわるようになっていったのです。その中におまけみたいな形で私もいたという感じでした。
大きな転換点となったのは、皆さんも記憶に新しい新型コロナウイルスの社会への影響でした。オリエンテーリングもその活動制限の例にもれず、私を含むいつメンで運営用意をしていたインカレミドル・リレーが中止になったり、大きな影響が生じました。
2020年の富士見高原で開催された全日本で初めて大会の実況担当を務めました。この時はまさか今も5年も続けることになるとは思ってもいませんでした。それを思うと当時声がけしてくれたK藤さんに感謝をしないといけません。
全日本初実況in富士見高原 |
コロナで参加者を応援したり、特に会場まで足を運べない方のためにオリエンテーリングを見せるという使命感のもと、いつメンの小柴さん中心にオリエンテーリングの大会をライブ配信するという試みが行われました。はじめて、国内で大会のライブ配信が行われたのは2021年のインカレロングだったと記憶しています。この時自分はランカメで森の中を走って中継する担当でしたが、終わった後に見たアーカイブは、素人なりにある程度いいものができるんだなあと感心した記憶があります。
そして、2021年のブランシュで開催された全日本で私も初めて配信にのせる実況を担当することになるのですが、これまでに経験してきた実況と違い、映像に合わせて言葉をうまく発することがあまりに難しく、スポーツを実況するアナウンサーの技量の高さに脱帽をしました。この時の経験は、ものすごく鮮明に覚えています。まだまだ下手ですが、数回やるとある程度最初よりはうまくなると思いました。練習はうそをつかないというのは本当です。最近は予算やオリエンテーリングの映像作成の方向性の見直しで生放送をすることはなくなりましたが、今ならもっとうまく実況できると思うので、いつかはまた挑戦したいと思います。
直近、自分が大会を実況していて一番記憶に強く残っているのは昨年の勝浦で開催された全日本ロングの女子選手権です。この時は、私も大会運営場所が近かったので、事前にインタビューなどの取材をたくさんできていた大会で、手持ちの情報や選手の意気込みをたくさん知ることができていた大会でした。2023年は海外から強力な選手がたくさん日本というホームに乗り込んできている状況で、そんな環境下で優勝を狙うI毛さんがどんな意気込みでこの大会に臨んでいるのかを知っていました。その強力なライバルがたくさんいる大会で見事に目標を達成するときの走りが今でも目に焼き付いています。この時、私は「これが日本の絶対女王!最強最速!~選手名~!!」と言葉にしていたのですが、本当に意識せずそういうちょっと仰々しすぎるフレーズが出てきてしまうほどかっこいいな~と思っていたようです。
競馬が好きな人はわかると思いますが、欧州最強のモンジューが日本にやってきた1999年のジャパンカップで、日本総大将のスペシャルウィークが海外勢を一蹴した素晴らしい走りを実況した、フジ三宅アナの気持ちもこうだったのかなと重ねてしまいました(このJCのフジ三宅アナの実況は1度聞く価値あると思います)。
毎回、実況は選手たちが見やすいようにゴール付近の特等席で大会を観戦できるのですが、その環境に毎年いさせてくれる皆さんに本当に感謝しかありません。まだまだ声がかかれば頑張っていきたいと思います。
■実況に臨むにあたって
実況に臨むにあたって、私が大事にしていることがあります。それは選手の生の声をしっかり自分の耳で聞いて集めることです。サッカーの実況では、実況者の手元にはいろいろな情報がまとめられたペーパーが配布されます。ペーパーにはスタッツなどの情報以外にも、新聞やインタビューなどの選手やチームに関する情報を専門の業者が抽出し、スポーツ実況用に取りまとめるという仕事が成り立っているからです。オリエンテーリングではもちろん、そんなものはありませんので、自分の手を動かしたり、聞いたりして情報をかき集めてくる必要があります。この事前準備の質で、当日の実況で話せる内容の濃淡が出来上がりますので、実況のクオリティに大きくかかわってきます。
ざっくりとしたイメージでは、10を調べて1を話すくらいが大会実況です。なので、その手元のカードをなるべく増やしておくのが柔軟な対応をするためにも有用と思います。
最初は何を注目していけばわからなかったので、やみくもに大会情報などを調べて取りまとめたこともありましたが、回数をこなして自分のスタイルというものが見えてきましたので、最近はこんな感じのシートを作成して、これに情報を書き込んでおいて手元の資料として実況をするという形になっています。
2024年の手持ち資料(未完成時) |
この形式、察しの良い方はお気づきになろうかと思いますが、競馬実況の塗り絵からインスパイアを受けて自分で作成しました。横方向ではなく、縦方向に情報を並べることでぱっと見のわかりやすさを確保しています。また、情報はキーワードを書いておく程度にとどめることで、一瞬で情報を目線で読み取れるようにすることを心がけています。
このフォーマットに大会の実績やアンケートなどで分かる情報を事前に書き込んで大会の前日に印刷します。印刷した後が大事です。
資料を印刷して、当日会場に行きます。当日会場では、実況が始まるまで少し時間がありますので、会場内をたくさん歩いて、選手権に出場する選手を見つけてとにかく話を聞いてみます。目標だったり、ライバルだったり、意気込みだったり、ジンクスだったり…雑談みたいなことをたくさん聞いて、なるべくメモをしてその選手の解像度を高めていきます。選手権に出られる方、いつも大事なレース前に時間を割いてくれて本当にありがとうございます。
2024全日本の選手直前インタビューの様子 |
そうやって生の声を聴くと、本人のかける思いなど、アンケートからなどではわからない文章にできない感覚を知ることができます。その受けた熱意をうまく言葉にまだ載せきることができていませんが、その思いをふまえて実況することで、少しでも会場の観客に今ゴールレーンを駆けている選手の姿を届けられればと思っています。特に全日本は最近、どの選手に聞いても目標をしっかりと定めていますので、インタビューしていても楽しいし、実況をしても楽しいです。いつまでも続けたいなと思ってしまいます。
■スポーツ実況はたくさんの実況者がいるから面白い
スポーツ実況者は星の数くらいいます。私が好きなスポーツはサッカーと競馬なのですが、競馬もサッカーもたくさんの実況者がいて、それぞれ輝く個性をもってスポーツを実況しています。私が好きな実況者の例を挙げます。
・サッカーの場合
下田恒幸さん
倉敷保雄さん
江本一真さん
ひとりひとり、特徴があるのがわかるでしょうか。癖、言葉使い、声の強弱、みんな違います。もっとわかりやすい例をあげてみましょう。競馬は全く同じ光景をみているのですが、アナウンサーが同じ言葉を発することは不思議なことに全くありません。例えば、12/9の日曜日に開催された競馬の阪神ジュベナイルフィリーズの言葉を切り取ってみたいと思います。最後の直線の言葉を書き出してみます。
・カンテレ石田アナの場合
先頭ミストレスで直線コース、外からリリーフィールド、さらにはショウナンザナドゥ、内を通ってもモズナナスターテリオスララ、さあ、まだ粘っている真ん中粘るカワキタマナレアミストレス、そして外から上がってきたのは一気にやってきたのはショウナンザナドゥ、一番外からはアルマヴェローチェ、アルマヴェローチェとビップデイジー、アルマベローチェとビップデイジー!三番手はショウナンザナドゥ、外から一気に抜けた!アルマヴェローチェだ!ガッツポーズ!岩田望来!!悲願のG1初制覇!!
・ラジオ日本 矢田アナの場合
4コーナーカーブ、最後のカーブを今回って最後の直線に入りました残り300、10番のブラウンラチェットはまだ後方!!先頭までは5~6馬身、まだたっぷりある!残り300mを切ってきたところまだ横一線6番のモズナナスター、テリオスララ!7番のミストレス、9番のショウナンザナドゥ、外から12番のアルマヴェローチェ1番のビップデイジー突っ込んでくる!外伸びる!!12番のアルマヴェローチェ、アルマヴェローチェ!1番ビップデイジー2番手、3番手横一線!12番のアルマヴェローチェだゴールイン!!2歳女王!!アルマヴェローチェ、G1初制覇!淀の阪神ジュベナイルフィリーズを制しましたアルマヴェローチェ!!
・MBSラジオ 三宅(秀)アナの場合
4コーナーのカーブ、西日が各馬を迎える先頭から最後方12馬身、横いっぱいに各馬が広がったぞ!直線コースを向いてくる、最内通ってはモズナナスターここで一気に先頭か、ミストレス、外からショウナンザナドゥ、ショウナンザナドゥ、一番外から上がってきているのはアルマヴェローチェその間から1番のビップデイジー上がってきた!内狭いとこからテリオスララも来た、残り100m大混戦の中1番外12番、アルマヴェローチェ、アルマヴェローチェ、2番手1番ビップデイジー3番手接戦!アルマヴェローチェ、ゴールイン!!岩田望来ついにやったぞG1勝ち!!12番アルマヴェローチェ!!
ラジオの声色が伝わらないのが残念ですが、誰しもが違うことを言葉に発していると思いませんか? このほかにも競馬は大きなレースだとラジオNIKKEI、文化放送やニッポン放送、TBSラジオ、OBC大阪ラジオやNHKなど、たくさんの聞き比べができます。
この実況者が好き!のようなえり好みができるのが、もっとメジャーなスポーツでの放送環境です。では、オリエンテーリングがどうかなと考えてみると、最近の全日本のような大きなレースでの実況では、スプリント以外は私が連続していますので、その違いを楽しめる状況にはまだありません。
オリエンティアは優しいので何も言われたことはないのですが、私の実況に関してご不満に思われている方もいらっしゃると思います。またあいつか!のように。
それは仕方ないことだと思います。だって私もたくさんスポーツ実況を聞きますが、今日の実況は○○アナか~いまいちだぜ!!と思うこと、たくさんあります。それは人の趣味嗜好ですから、当然です。
だから、私は私以外にオリエンテーリング大会の実況を任せられる実況者を見つけていきたいと思います。別に自分が実況をやめたいなと思っているわけではありません。こんなに楽しい運営の役割は個人的に、正直ないと思っています。だから譲りたい!と思ったこともありません。でも、私以外の方が本気で全日本やクラブカップを実況してくれたらどうなるのかな、ということが気になっている自分がいるのです。
最初はみんな初心者、フォローしてくれる仲間が後ろに控えています。 |
5年近くやると、スキルは上がってきます。もちろんプロと比較したらアマチュアですが、1~2回しか実況を大会でしていない方よりは、うまく話せるという自負があります。だから、何回も全日本のような魅力ある大会に運営としてかかわってくれる方がいたらなあと思っています。全日本の運営は挙手制の側面が強くあります。数年、競技者ではなく運営として裏方に徹する覚悟がある我こそは!というチャレンジャーの参加を私は心待ちにしています。
ただ、実況をしませんかということを書いていても、魅力が伝わらないかなと思うので、実況をしたことで私が得られたと感じるモノがありますので、紹介したいと思います。
・単純に、話がうまくなる
話がうまくなります。本当です。例えば私は仕事では営業をしているのですが、商品の紹介やプレゼンテーションを行う際に言葉に出てしまいがちな「あの」とか「えー」といった言葉を発さないでいろいろと話せるようになりました。言葉を紡いで発するのは、頭の中のパズルを瞬間的に組み立てて、意味のある言葉を口にするという瞬発力が必要だと実感します。そのトレーニングができます。最初は本当にうまく話せませんでした。なので、私は最初にたくさんのスポーツ実況を見て聞きました。そして、好きなアナウンサーの実況を英会話のようにシャドーイングして自分の言葉にする練習をしてみます。少しボキャブラリーができてきたら、同じ映像をミュートして、自分の言葉でそのシーンを実況してみます。こういう練習をしていると、少しずつ言葉を瞬発的に発せるようになってきます。実況担当になった方は、たくさん言葉を発する練習をしてみてください。その練習は、実況だけではなく一般的に使えるスキルに展開できる汎用性があると実感しています。
気が利いたコメントや面白いコメントをするのはなかなか難しいです。そのあたりのワードセンスやユーモアは漫才をみて勉強をしてみようと思って、漫才もたくさん見て自分の言葉で発してみたりもしましたが、こっちはまだ道半ばです…。ナイツの塙さんと土屋さんみたいに楽しい話ができればいいんですけどね。
・オリエンテーリング界で顔が広くなる
前述したように、たくさんの人にインタビューしたりして、話を聞かないといけない役割です。面識のない選手でも、大会インタビューです!という特別なチケットを切ることで、快く(たぶん)話を聞いて自分の顔を覚えてもらえることができます。これは実況や演出にかかわっている人の特権だと個人的に思っています。
・特等席で大会を観戦できる
これも前述したとおりです。最高のポジションで大会を見られる環境が整うことが確約されています。
最初から一人で実況は君に決めた!あとは任せたぜ!という無責任をするつもりはありません。最初は一緒に、そのあとは一人で任せられるように二人三脚でもう一人のオリエンテーリングのアナウンサーを見出して大会運営の厚みを増すことができるようになれたらなあと思っています。我こそは!と思うスポーツ実況好き(←とても大事)のオリエンティアがいたら、ぜひ全日本やクラブカップの運営に挙手をしてください!!よろしくお願いいたします。
長文にお付き合いいただきありがとうございました。最近は国内を飛び出して海外のオリエンテーリングに参加することにハマっています。人生は冒険だ!ということでもうすぐ30になりますがまだまだフットワーク軽く、たくさんの挑戦をしていきたいと思う今日この頃です。来年も冒険を一緒にしましょう!それでは!!
イタリア選手権の演出は日本より簡素!! |
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